旨みも栄養もアップ！カラダにうれしい発酵食品のチカラ

「発酵食品」とは、微生物のはたらきによって旨みや栄養がアップした食品のこと。日本人にとっては古くからなじみ深い発酵食品ですが、昨今のヘルシー志向の高まりから、今あらためてそのさまざまなチカラが注目されています。

そもそも「発酵」とは？

「発酵」とは、微生物のはたらきによって、食品の成分や性質が変化すること。カビ・酵母や細菌といった微生物が、食品のたんぱく質や糖質を分解することで、別の成分が生みだされたり食感が変わったりすることを言います。
といっても発酵とされるのは、この変化が人にとって有益である場合だけ。逆に、同じく微生物による変化であっても、それが人にとって有害であれば「腐敗」になります。

うれしい・おいしい発酵のチカラ

発酵によってもたらされる有益な変化は、おおまかに分けて次の5つです。

旨みがアップする

微生物が食品を分解すると、グルタミン酸やイノシン酸などがつくられます。これらは旨みのもととなる成分。食品をより美味しく食べられるようになるだけでなく、醤油や味噌のように旨みを凝縮した調味料を作ることにも役立ちます。

栄養価が高くなる

発酵の過程で、ビタミン・ミネラルや酵素などの栄養がもとの食材よりも増加したり、素の食材にはなかった栄養素が作り出されたりすることも。たとえば納豆は、大豆に比べてビタミンB群が増加し、ナットウキナーゼという酵素が作られます。

消化吸収しやすくなる

食品が分解されるということは、栄養成分の分子が小さくなるということ。分子が小さいほど体内に吸収されやすくなります。私たちはもともと、食品の栄養を効率よく吸収するために消化器官で食品を分解していますが、発酵はこれを代わりに行ってくれるのです。

長期保存しやすくなる

食品の中に人にとって有用な微生物を多く繁殖させることで、腐敗の原因となる有害な微生物が抑えられるため、長期保存しやすくなります。冷蔵庫などがなかった昔はもちろん現代でも、この発酵のチカラがさまざまな食品の保存に役立てられています。

腸内環境を整える

近年、健康を維持するうえで重要であると注目されているのが、腸内環境を整えること。具体的には腸内の善玉菌を増やして、悪玉菌の増殖を抑えるということです。発酵食品には乳酸菌をはじめとして善玉菌にあたるものが豊富に含まれているため、腸内環境を整えるはたらきがあると考えられます。

世界の発酵食品

人のカラダと生活に役立つ発酵のチカラは、世界の至る所で古くから利用されてきました。そのため、世界を見渡すとじつにさまざまな発酵食品が存在しています。

もっとも代表的なチーズ・ヨーグルトは、牛乳を乳酸菌によって発酵させた食品。キムチ・メンマ・アンチョビ・ピクルスなども同じく乳酸菌による発酵食品です。
またワインやビールは、酵母菌が糖質を分解してアルコールを作り出すことを利用しています。酵母菌の発酵は、パンやお菓子にも使われています。
ちょっと変わったところでは、ナタ菌とココナッツ水で作るナタ・デ・ココや、麹菌と茶の葉で作られるプーアール茶なども発酵食品です。

日本の発酵食品

そんな世界の中においても、とくに豊かな発酵文化を培ってきたといわれるのが日本。これは温暖湿潤な日本の気候が、微生物の繁殖に適しているためだと考えられています。

日本の発酵食品でとくに特徴的なのが、カビの一種である麹菌を利用した食品です。例としては醤油・味噌・みりん・酢・日本酒・焼酎などが挙げられますが、これらは日本の伝統的な食生活に欠かせないものばかり。さらに意外かもしれませんが、じつは本枯れ節（かつお節）も麹菌による発酵食品なのです。

麹菌のほかにも、たとえばぬか漬けや粕漬けのような漬物は乳酸菌による発酵食品ですし、納豆菌と大豆で作られる納豆は日本を代表する発酵食品。また地域別に見ていけば、鮒ずし・くさや・豆腐よう・くず餅など、それぞれに特色ある発酵食品が数多く存在しています。

発酵食品のチカラで、美味しく健やかに

私たち日本人に古くから根付いてきた発酵食品は、大切な食べものをムダにせず、美味しくいただくための暮らしの知恵。しかも、それを日常的に食べることで、知らず知らずのうちに体調を整えることにもつながります。
そんな発酵食品のチカラを毎日の食卓に取り入れて、健やかな毎日を目指しましょう。

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