がんにならないために今できること

国立がん研究センターによれば、日本人が生涯でなんらかのがんになる確率は、男性65.0%、女性50.2%(2018年データによる)と、いずれもほぼ2人に1人にものぼるのだそう。でも近年の研究で、そんながんのリスクをできるだけ低くする方法が、少しずつ分かってきました。そこで今回は、がんにならないためには、どうしたらいいのかというお話です。
そもそも「がん」って?

「がん」を一言で説明すると「死なない細胞が増殖すること」ということができます。私たちのカラダはおよそ60兆個の細胞でできていると言われていますが、その細胞は分裂と死をくりかえすことで、つねに新しく入れ替わりながら、適正な数を保っています。しかし、ときどき何らかの原因で細胞に突然変異がおこり、「死なない細胞」ができてしまうことがあります。この死なない細胞が異常に増殖して、周りの正常な細胞に浸みこむように広がったり転移したりするのが「がん」という病気なのです。
死なない細胞がすべてがんになるわけではない
じつは死なない細胞は、健康なカラダの中でも1日に5,000個ほどもできています。とはいえ、これらの細胞のすべてが、そのままがんになるわけではありません。これは死なない細胞ができるたびに、免疫細胞が退治しているから。
でも年齢を重ねると、カラダの中で死なない細胞ができやすくなるうえ、免疫細胞の働き(免疫機能)が衰えはじめます。そうして退治しきれなかった死なない細胞が、やがて増殖してがんになるというわけです。つまり、がんにならないようにするためには、できるだけ免疫機能の衰えを遅らせて、維持することが大切といえるでしょう。また、がんの原因といわれるような生活習慣を改め、免疫機能に余計な負担をかけないことも重要です。
がんにならないために
近年、がんや免疫機能についてのさまざまな研究から、がんにならないために、具体的にどのようなことをしたらいいのかということが少しずつ分かってきました。そのなかでもとくに重要といわれることをご紹介します。
タバコ、お酒をやめる

何種類もの発がん性物質をふくむ「タバコ」は、肺がんのもっとも大きな原因として知られていますが、じつは他にも口腔がん・食道がん・膵臓がん・膀胱がんの発生率を高めるといわれています。しかも、タバコを吸うと血流が悪化することにより、免疫機能も低下するということが分かっています。また、お酒の飲み過ぎも免疫機能を低下させてがんを引き起こす要因のひとつ。さらに、飲酒と喫煙両方の習慣がある人の場合は、がんの発生率が飲酒だけの場合のおよそ2倍にもなるといわれています。もしも喫煙や飲酒の習慣があるなら、まずはそれをやめることが、がんになる確率をまちがいなく低くするといっていいでしょう。
特定のウイルスや細菌による感染症の予防・治療をする

胃がんはピロリ菌、肝臓がんはB型・C型肝炎ウイルス、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスが原因となって引き起こされることが多いということが分かっています。これらの菌やウイルスによる感染症を予防・治療することも、特定のがんにかかりにくくするために有効な手段です。
肥満を避ける

肥満も免疫機能を低下させる大きな要因のひとつです。とくに年齢を重ねると代謝が下がるので、男女問わずどうしても太りやすくなるため、意識して肥満を避ける必要があります。たとえば暴飲暴食を控えてバランスの良い食事を心がける、適度な運動を続けるなど、ムリの内範囲で適正な体重の維持するようにしましょう。
ストレスを溜めない

いうまでもなくストレスは、免疫機能の大敵です。あらゆる病気を引き起こす可能性があるといわれますが、もちろんがんも例外ではありません。まずはつねに十分な睡眠をとり、疲れを長く持ち越さないようにしましょう。趣味に打ち込んだり、大切な人と過ごしたりなど、生活を楽しむことも大切です。
がんの早期発見のため定期検診を

将来がんになる確率を少なくするために、私たちが今すぐできることはいろいろありますが、残念ながらがんを完全に防ぐ方法はありません。万が一がんになってしまった場合には、とにかく早く治療を始めることが重要になります。治療の機会を遅らせないように、定期的に検診を受けて、がんの早期発見に努めましょう。